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草間芸術の宇宙観
草間弥生さんの美術展が二十九日から七月四日まで東京都現代美術館で開かれている。上野の美術館なら迷うことはないが、都現代美術館は建設間もないし、松本の人はほとんど知らない。東京都地図を見て大体の見当をつけながら出発した。都内の電車で押されながらふと見ると、「草間弥生&荒木経惟」の二人の顔のポスターが掲示されていた。現代美術館の宣伝ポスターで、同日時にも、真裸万象を生撮りする荒木さんの個展を告げるものだった。車両ごとに掲示されており美術館の力の入れようは尋常でないことを知った。綿糸町駅でタクシーに乗り行く先を告げた。美術館は地下鉄、総裁線を利用しても駅から遠く不便な場所ですという。深川を通過した。水溝をめぐらした木場の近くへ来ていた。運転手は池波止太郎の鬼平犯科帳の舞台ですーと説明してくれた。なんとなく下町情緒が匂ってくるようだ。入り口では高さ二メートル、幅一材の集積物が迎えてくれた。詰め物入りの縫生布で真っ赤に彩色されている。横の水槽にも草間さんの作品、巨大な水球が泳ぐように浮かんでいた。
展示は第一部がニューヨーク時代(一九五八-六八)で、ニューヨーク近代美術館が米国にある代表作を集め構成した。第二部は米国滞在を挟み帰国後、現在に至る日本での活躍を東京都現代美術館が編成した。現代の美術家は従来の技法から如何に抜け出して創作するかである。ピカソは同一画面に顔を真ん中、右横、左横など同一人物の動きを描き立体派と称して多くの人をビックリさせた。草間さんの作品はこれ以上で、微細な神経力を集中して巨大なものに仕上げている。思わず圧倒されてしまった。侘び寂びの世界ではない。人間の細胞の刻々増殖を続ける無限の力、また大宇宙の中に生存する無限の小さな魂を芸術のシンボルにしている。無限の増殖には草間さんの煩悩が表現されたの,であろうか。人真似でない草間さんの創造が、世界の草間との名声を博しているのである。ミラ-ルーム「かぼちゃ」は二メートル立方体のガラスの部屋である。入って見た。四方八方がかぼちゃの中に自分の姿が納まる。また50センチ四方のガラス箱を除くと草間さんの描く水玉や網目が増殖して行く。覗きからくりのような美術の新しい世界の幻影にしばし酔ってしまった。
レセプションには現代美術館を設計した柳沢孝彦さん(松本市出身)や荒木経惟さん、勅使河原宏さんらが、小社の新保力社長を囲み「松本で草間展を開く必要がある。草間作品を松本美術館の目玉にして世界に問うことだ」と提言をしてくれた。スケールが巨大でまさに美術の革命であろう。
『古川寿一の聞いたり見たり』
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