脳性麻痺手術の約10年後の成果

2010年3月27日

創風社 千田顕史

 このホームページを立ち上げ、約10年間たちました。5〜6年間ほとんど新しい情報を提供してきませんでしたが、脳性麻痺手術の整形外科的治療、脳外科的治療の成果を確認できるところまできましたので、報告します。

1整形外科的治療……松尾隆先生から私あての年賀状に(H22年)に年間1000件(脳性麻痺)を越す手術が南多摩整形外科病院で行われ、顔以下背から腹から指先まで正常化できる手術がすすんでいるとありました。松尾先生が東京で手術をするようになってまだ10年もたっていません。

2 脳外科的治療…東京女子医大の堀先生のところで日本で3番目のSDRの手術をうけた(3才ぐらいで)Iさんから、毎年年賀状をもらっています。SDRを受けて6年目に年賀状に「SDRをうけて本当によかった」7年目に「おしり、足の筋肉のつきがよい」、8年目に「最近つえ歩行ができるようになった。SDRの成果と思います」とかいてきました。横浜市立大学のリハビリテーションに通っているので、SDRをうけないこどもたちとくらべて、どこがちがうか確認できるようです。Iさんは手術後3年間ぐらいは手術の成果はわからないといってました。

…………………………………………………………………………………………………………

上のように脳性麻痺の手術は相当に前進してきていると私は思います。旧来は訓練、訓練とやってきて、どうにもならないところまで痙縮が進行し、体全体の機能が低下するところでようやく手術でした。しかし、松尾先生の整形外科的手術、堀先生の脳外科的手術は6才までに最初の手術を行い、育てやすい体にする、重度にさせないというところをめざしていると思います。10年間の手術の成果はそのことを証明しているようです。

 わかりやすく整理しますと、今まで訓練中心でスタートし、状況が悪化してからする手術を消極的手術、松尾先生の整形外科的手術、堀先生の脳外科的手術は積極的手術と分類できるようです。脳性麻痺児と診断されると訓練をやっていけば8才ぐらいまでは運動機能が成長するといわれています。ですから手術の必要性が感じられない人が大部分です。しかし、積極的手術は3〜6才までに行われ、育ちをよくし、成長したあと重度化を防ぐことを目的としています。脳性麻痺の医学の世界では、日本中の大部分が消極的手術です。積極的の手術の普及に協力して約8年間たちましたが、ようやく成果がみえてきたように思えます。

医学・障害児医療のコーナーへ、その他 創風社既刊案内等