2025/6/12更新 

富澤修身(大阪公立大学) 著

適応と創造のファッション産業論

本文320p A5並製 予価 2800円 

ISBN978-4-88352-284-2 C3033 ¥2800円

 本書は、社会現象としてのファッションを取り上げている。ここでいう社会現象とは、
人々の共感をベースとして同じスタイルを長短の一定期間共有するという意味である。こ
こには社会的表現としての、また社会的行動としての集団形成を見ることができる。個人
の尊重、表現の自由を大前提とした上で共感を通じて集団を形成し行動する論理は社会や
世界を変革する(今日的に言えばトランスフォームする)際に重要な役割を果たす。この
論理の解明にファッション研究は大きな貢献ができる。こうした認識が著者のファッショ
ン研究のベースにある。
その際にすぐに想起されるのは、ファッションは、経済力の違い、性別・年齢の違い、
テイストの違い、国・地域・信仰の違い、自己(自分)・心身のあり方の違いなど多くの
条件によって多様な有り様を示すし、歴史的条件の違いによっても多様な有り様を示す。
さらには享受者と供給サイドとの力関係、享受者の主体性の有無・強弱、消費における浪
費・地球環境への多大な負荷の問題など、極めて複雑な要因も絡まり作用している。こう
した絡まりを1 つの論理――生活者の主体性のあり方――で整理して関係する要因間の関
係性を提示した上で、その社会的歴史的意義を見出すことができれば、ファッションは現
代が直面している社会的課題を解決する際に有意義な役割を果たすことができるであろ
う。(本書 まえがき より)
目 次

まえがき
第1部 社会科学とファッション
    ――享受者・需要サイドの視点より――
第1章 特権階級と新興富裕層のファッション
    ――アダム・スミスのファッション論――
  1 はじめに
  2 『道徳感情論(第六版)』の目的・構成・特徴
  3 『道徳感情論(第六版)』における諸概念間の関係
  4 『道徳感情論(第六版)』のファッション論
  5  むすび
第2章 金満家の顕示的ファッション
    ――アダム・スミスとソースタイン・ヴェブレンのファッション論比較――
  1はじめに
  2 スミスとヴェブレンのファッション論比較
  3 むすび
第3章 1920 年代のファッション
    ―― Paul H. Nystrom(1928)Economics of Fashion の紹介と検討――
  1はじめに
  2 Paul H. Nystrom(1928)Economics of Fashion の紹介
  3 Paul H. Nystrom(1928)Economics of Fashion の検討
  4 むすび
第4 章 孤独で不安な社会のファッション
    ――デイヴィッド・リースマン『孤独な群衆』のファッション論――
  1 はじめに
  2 スミス、ヴェブレン、リースマン
  3 リースマンが論拠とした諸研究と社会像
  4 リースマンの社会的性格類型論、ファッション論、自律性
  5 評価
  6 むすび
第5 章 自己表現としてのファッション
――ダニエル・ベルとA・H・マズローの自己実現論の比較研究――
  1 はじめに
  2 ダニエル・ベルの自己実現・自己表現論
  3 A.H.マズローの自己実現論
  4 「ファッション業界が今すぐやるべき5 つのこと」、人材発掘、中小企業、デジタル化
  5 むすび
第6 章 ダウンシフティングとファッション
  ――ジュリエット・ショア『浪費するアメリカ人』の場合――
  1 はじめに
  2 ショア『浪費するアメリカ人』の基本的内容
  3 ショアのファッション論
  4 2 つの視点からの評価
  5 ディドロ効果を好循環へと反転させる
  6 むすび
第7 章ウェルビーイングとファッションの再定義
  ――ジュリエット・ショア『プレニテュード』を踏まえて――
  1 はじめに
  2 『プレニテュード』の時代認識とファッション
  3 <豊かさ>と幸福
  4 <豊かさ>の実現__富の別の源泉を見つける
  5 評価――ショアの視点を敷衍すれば
  6 ファッションの再定義に向けて
  7 むすび
第2部 サステナビリティへの適応と創造のファッション産業
  ――供給サイドの視点より――
序 ファッションとファッション産業の立ち位置が問われている
  1 はじめに
  2 SDGs を念頭に
  3 第2 部の構成と結章について
第8 章 ファッションとSDGs
  1 はじめに
  2 ファッションの大変動とSDGs
  3 いま、変わる潮目と期待
第9 章 現代のファッションとファッション産業のあり方に作用する諸要因ノノノ
  1 はじめに
  2 ファッションとファッション産業のあり方に作用する諸要因
  3 時代区分の視点で考えよう
  4 「ファッション業界が今すぐやるべき5 つのこと」、人材発掘、中小企業、デジタル化
  5 むすび

第10 章「いのち・健康・幸せ」視点のファッションとファッション産業
  1 はじめに
  2 フィジカルヘルス
  3 メンタルヘルス
  4 ワンヘルス
  5 企業からの発信
  6 ファッションとファッション産業のコストとベネフィット
  7 新ファッション産業システムへの転換
  8 大転換は新しい消費者市民と手を携えて
第11 章 変わるファッション産業システムの担い手企業
  1 はじめに
  2 クールジャパン戦略、伝統(的)工芸品、次世代を担う繊維産業企業100 選
  3 ウエア・ファッションに関わる企業集積
  4 SDGs 達成への挑戦
  5 むすび
第12 章 サステナブルなファッション産業企業を目指して
  ――サステナビリティ実現を見える化するために――
  1 はじめに
  2 サステナビリティポリシー
  3 企業に向けられる5 つの視線
  4 サステナビリティを見える化する際に考慮すべきフェーズ
  5 繊維製品の環境配慮設計に関する事例集とガイドライン
  6 SDGs 達成進捗度測定シートについて
  7 むすび
結章 ファッションとファッション産業の新段階
参考文献等一覧
あとがき