症例(DREZ ・痛みと痙縮の治療)
 

症例後根進入帯破壊術、神経切除術(DREZ・Neurotomy)より引用
1)18歳女性(表2症例1)、硬膜外への
悪性腫瘍の転移による左肩ー上肢の痛みがあり、morphinにてコントロールしていたが、徐々に増量。 左C4(1/2),C5,6,7DREZ-tomyを行った。 術後MSコンチンが不要になった。悪性腫瘍によって死亡するまでの半年間痛みの良好なコントロールが得られた(鳥取大学症例)。
2)28 歳男性(症例4)。
外傷に起因すると思われる、Reflex sympathetic dystrophyによる左上肢 C5-Th1の痛み。術後C4,1/2---Th2,1/2までのMDTを行い、allodynia 消失、痛みは10/1-2、RSD によると考えられる筋萎縮があったが約半年で完全に正常になった。この患者では左下肢のRSDもあり left L3-S2のMDTを行ったところ、当初
約60%の効果と言っていたが、徐々に軽快傾向にあり、退院後外国旅行が可能となった。 図9は本手術前後の足の状態の変化を示す。 術前(左)見られた、発赤・腫脹は著明に減少し、痛みも消失した。 しかし、骨萎縮などのRSDの症状は進行しており、この病気の深刻な病態はMDTでも不変である。
3)57歳男性(症例3)。 直腸癌の転移。 両側 L2-S5の MDTを施行した。術後両下肢痛み消失、左下肢痙縮消失、腹痛、麻痺性イレウスが悪化、肺炎となり、3ヶ月後に死亡した。
4)38 歳、男性(症例2)。 右syringomyelia によると思われる痛みがあった。右C5-Th2 のMDTを施行した。術後痛みは2/10、しびれあり、反対側上肢に軽い痛みが出現した。
5)54 歳男性(症例5)。 右 syringomyelia によると思われる痛みがあった。右C6-Th4 のMDTを施行した。術後痛み完全消失、TH1にかるいしびれあり。 図10左上はDREZ中にくも膜嚢胞が示されている。 図10右は空洞部が解放されたところ。図11はDREZの病変を示すT2WIMRIでくさび型の病変が認められる。
6)59 歳、男性(症例7)。 pancoast型の肺癌による右上肢の痛みあり。 右 C5-Th1のMDTを行う。痛みはDREZ 領域で消失、術前からの正中神経麻痺がやや悪化?
7)68 歳(症例8)、男性。 腰部の手術後の痛み(failed back)。 left S1-S3 MDT。痛みは完全消失、しかし反対側の臀部に同様の痛みが出現
8)57 歳、男性(症例9)。 rectum ca による腰仙部の痛み。bilateral L2-S5 MDT。痛みは2/10となる。両下肢のしびれはあるが、歩行は障害されていない
9)59 歳、男性(症例6)。 rectum ca による腰仙部の痛み。bilateral L1-S5 MDT。下肢の痛みは消失、会陰部は2/10、右下肢深部知覚障害出現。 この症例での術前、術後の患者さんの痛みの状態を奥さんが書いたchartを図12(術前、術後)に示す。
その後患者を送って下さった外科へ移ったが、リハビリを行い、歩行が可能となった。
以上が
疼痛の患者である。

痙縮の患者についてDREZを行った最近2例の経験を示す。
1) 35 歳、男性。 サーフィンで溺死寸前となり、低酸素脳症後の両下肢の痙縮の患者。術前痙縮が著明で両側の L1-S1 MDTを行う。術後痙縮著明改善、排尿も改善し術前の排尿時時間がかかっていたのが楽に排尿できるようになった。
2)16歳、男児。脳性麻痺によるbilateral spastic paraplegiaで歩行が不能であるばかりでなく、車椅子にも座っていられない(ずり落ちてしまう)。 bilateral L1-S1 のMDTを行った。痙縮著明改善し、車椅子に長時間座っている事が可能となる。現在リハビリテーション中。

参考 患者さんの母から堀への手紙の要約痙縮の患者症例2)

”つい最近まで尖足がひどく、家の中をゆっくりと歩いていました。補装具をつけても思うように踵が着かず、特に上り坂は辛そうでした。 最近では本人には言いませんでしたが症状がひどくなったような気がして悩んでおりました。手術後自宅から駅まで歩くとき一緒に歩いていて自然に近い歩き方で早く歩けて、障害者である事を忘れさせてくれます。いつも風呂上りは最悪でよたよたしていましたが、今日は普通に歩いています。電車を降りるときにも一駅前には準備が必要でしたが今ではとまってからスット降りれます。 痛みはありますが、うれしさの方が大きそうです。