新刊案内 2017年3月16日更新 2017年3月24日発売 
永 井 務(東京国際大学)著
資本主義の終焉とアメリカ民主主義
――アソシエーション,プラグマティズム,左翼社会運動――
発売中
A5判並製286頁 本体2400円 PDfチラシ

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――実体経済に基づく経済成長が不可能になり,貿易赤字・財政赤字に耐えきれなくなった事態を示すニクソン・ショック(1971)を境に,〈利潤極大化〉を求める財界と経済エリート層(Establishment)は,とりわけレーガン政権以降(1981〜)利潤率低下・資本蓄積減少に対応するために新古典派経済学とその極右に位置する新自由主義(マネタリズム)を選択し,協調的福祉資本主義を捨てた。実体経済の不振を補うために,金融領域に新たな経済成長を求めて,銀行・証券会社分離法に代えて銀行による証券業務を認めるグラム=リーチ=ブライリー法を可決(1999)した。ドルが通貨基軸である「信用」に仮託して,実体経済・金の裏付けのないドル紙幣や国債券を印刷し金融派生商品を売り出し,旧来の国内市場(market)に加えて東欧社会主義国の崩壊によって広がった世界金融市場からも「財」(goods)を収奪する金融資本主義(それらの総称としての反リベラリズム)へ転換した。しかし,リーマン・ショック(2008)は,その「信用」が虚構であること暴露した。
 この間,財界と経済エリート層は,対外的には,多国籍企業と巨大金融企業を軸に,近代以降のグローバリゼーション(globalization)を御旗に掲げて,世界の財を収奪しまたドルのアメリカへの還流を追求してきた。対内的にも,かれら企業が実体経済と金融経済を支配し,果実の多くを超富裕層・富裕層が食し,国民の多くは滴り(trickle down)に与かれず人口の多数を閉める中間層と下層は生活に苦しむ,という社会分裂が進んだ。その結果,アメリカ民主主義の基盤である国民国家の枠組が崩壊しつつあり,その担い手である市民も分裂しつつある。ノノ(本文「はじめに」より)

(主要目次)  
第1章 アメリカ社会と近代知識人 
第2章 アメリカ批判理論 
第3章 アソシエーション,プラグマティズム,現象学的マルクス主義,「新しい社会運動」 
第4章 2008年 アメリカ――リーマンショック―― 
第5章  正義論とカジノ金融資本主義 
第6章 文化的新保守主義と左翼知識人――D.ベルとN.チョムスキー―― 
第7章 2016年 アメリカ大統領(予備)選挙――2016年のアメリカ―― 
第8章 現代資本主義の終焉とアメリカ民主主義――原理論的検討―― 
付論


関連書
 永井務・福山隆夫・長島隆編『物象化と近代主体』(創風社)
 永井務著『アメリカ知識人論』(創風社)
 

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