高野 範城 著(09/12/25更新)
乳幼児の事故と保育者の責任

――公立と私立で保育者の責任がどう異なるか―― 

 本書を読む人ヘー私は,1996年8月に全国社会福祉協議会主催の事故予防セミナーで,「乳幼児の事故に関する法律問題」として講演しました。その際,会場の参加者が大変熱心に聞いているのを見て驚くとともに,これほど反応の多かった講演も珍しいと思ったことがあります。その後,全国各地の保育団体より講演の依頼が文字どおり殺到しました。講演の際に,関係者の方々と懇談する機会があり,各保育所では大小を問わす事故が発生しているとの話しを開き,如何に多くの保育者が事故の問題に関心をもっているかがわかりました。また,親の依頼をうけて保育を真面目に行っていても,事故は思わぬ形と時間と場所に起こることを,保母や園長は,いわば肌で感じていることに加えて,私立の保育園と公立の保育園で事故の責任や補償のあり方が異なるのはおかしいという当然の疑問が多く出されました。そこで,本書では公立と私立の保育所の責任の問題を念頭にいれて,保育者の疑問になるべく率直に答えるかたちをとっています。いろいろな機会に講演を開いた園長や保母の方々の感想の多くは,自分たちが如何に事故の法律問題について知らなかったか,そして事故の予防に取り組むことの重要性について改めて理解したと述べていましたのが印象的です。……‥・本書は講演後に生じた児童福祉法の問題を随所にいれて,事故の問題を多面的な角度から論じています。多くの方々に本書が読まれることを心より期待します。


目  次
本書を読む人へ
序章 弁護士の仕事と福祉
  一 私の故郷と家庭
  二 弁護士の仕事と福祉
第一章 今日の乳幼児の事故の特徴と保育者の責任
  一 乳幼児の事故をどうみるか
  二 乳幼児の発達機会と事故との関係
  三 子どもの遊びの喪失と保母の責任との関係
第二章 保育者は事故に対してどんな責任があるか
  一 事故に対する四つの責任
  二 橋北中学三六名の水難事故を通じて責任を考える
   1 事故の概要
   2 判決結果
   3 刑事責任と民事責任の違い
   4 道義的責任
  三 四葉子ども会の水難事故
   1 事故の概要
   2 川遊びの楽しさと危険性について
   3 川遊びの際の注意(留意)
   4 判決結果は
  四 二つの事件を通じて責任の問題を考える
第三章 誰が事故の責任を負うか
  一 子ども同士の事故の場合
   1 保育所・園長の責任
   2 保母の責任
  二 保育園の施設、設備による事故
  三 動物占有者、保管者の責任一
  四 その他の事故
  五 事故発生についての保母の責任 − 徳島の事故を例に −
   1 事件の概要
   2 判 決 は
   3 専門職の任務とは
   4 死亡事故後の解剖について
   5 何を学ぶべきか
第四章 どんな場合に保育者・園に責任が生じるか
  一 和歌山六歳児の事件
   1 事件の概要
   2 加害者の子どもの特徴と保育園の対応
   3 判決の認定は
   4 園の園児に対する責任の範囲
   5 旧学校安全合と園の責任
   6 旧学校安全会の問題点
   7 加害者の親の責任
  二 施設の設備・構造が原因の事故と園の責任(松山の事件)
   1 事件の概要
   2 裁判所の判決
   3 被害者の家庭の事情
  三 二つの事件の意味するもの
   1 和歌山の事件について
   2 松山の事件
第五章 どんな場合に国・自治体に責任が生じるか
  一 児童福祉施設と国・自治体の責任
   1 措置した側の責任
   2 児童福祉法上の自治体等の責任根拠
  二 措置委託と自治体の責任をめぐる法的諸問題
   1 適用される法律によって救済に差があってよいか
   2 平成九年児童福祉法の改正と自治体の責任
  三 保育所以外の児童福祉施設の措置
   1 養護施設の場合
   2 教護院の場合
   3 北海道家庭学校について
   4 施設を護る
  四 広島地裁福山支部の事件(昭和五四年六月二二日判決)
  五 私立ハルム保育園事件
  六 無認可保育所の事故について
   1 はじめに
   2 ベビールームの事件
   3 まり子ちゃん事件
   4 SIDSの判決
  七 措置についてのまとめ
   1 いろいろな措置
   2 子どもの事故と措置
   3 子どもの事故と最低基準との関係
第六章 子どもの事故に対する園の最初の対応のあり方をめぐつて
    ――水戸五中事件――
  一 水戸五中事件の概要
  二 民事裁判へ発展
  三 事故報告書の記述は正確に
  四 教育熱心は体罰の違法を阻却しない
  五 初期の対応が水戸五中事件を長期化させた
第七章 事故が発生したらどうしたらよいか
  一 まず、専門家にみせる
  二 親への報告
  三 事故原因の徹底調査
  四 お見舞いは必須
  五 他人まかせにしないこと
  六 損害賠償の金額をどう算出するか
   1 傷害の場合
   2 傷害の後遺症が発生した場合
   3 死亡の場合
   4 過失相殺について
  七 示談にあたっての注意事項
   1 示談の開始について
   2 示談の際の注意事項
第八章 児童福祉施設の事故の補償立法を
  一 保育所の事故についての基本的考え
   1 児童福祉法と子どもの権利条約
   2 公の保育・公の責任
   3 専門家としての自覚を
   4 保育所事故のまとめ
  二 民間の損害保険について
  三 日弁連の提言・
   1 新たな「救済制度」 の大綱
   2 安心・安全な保育所を
  四 おわりに
第九章 質疑応答
  資料編
  参考文献
  あとがき

立読みのページ(09/12/25)

既刊案内 教育学本の検索Top