既刊案内06年2月15日発売

高野範城(弁護士)著

 措置と契約の法政策と人権
−福祉系学生と職員のための法学入門−

発売中

46判並製 210頁 本体 1500円 

本書を読む人へ

1.(本書のねらい)
(1)本書は、社会福祉の法政策の中心である措置と契約の長所、短所、権利保障の意味を法律による行政と人権の視点から検討しています。これまでの福祉系の大学や専門学校は、介護や医療等の「技術」の専門家の養成という側面が強く、法律の授業は福祉を実施するための根拠法として学ぶ程度でした。それゆえ、社会福祉法3条の個人の尊厳の意味や利用者の人権の今日的意義が十分に授業で教わる機会がありませんでした。本書は、明治憲法と日本国憲法の自由権保障の相違や生存権の保障の歴史的意味を明らかにしています。そして今日、社会や福祉の現場で生起しているさまざまな事例を法律家の視点からとりあげながら、利用者の人権の意味と法の役割を明らかにしています。その意味で、本書は福祉の専門職の方々の社会福祉の法と人権を中心とした法学の入門書ともいうべき本です。

(2)日本の社会福祉の法と政策は措置から契約へ転換し、利用者の権利意識も5年間で大きく変わりつつありまB本書は社会福祉における利用者の人権の意味を明らかにするために、下記の8つのことを重視しています。
その1はこれまでの社会保障、社会福祉の教科書ではほとんど記述されない、人間の自由と人権の歴史からみた、利用者の人権とは何かを明らかにしていることです。その2は福祉の充実と平和的生存権を連動させることが国民の生存と福祉の充実に連なることを明らかにしていることです。その3は福祉の職員が利用者の人権を護るためにどんな使命と役割があるかを明らかにしていることです。
そして、その4は、貧困が人間の意識、行動へ及ぼす影響等を所得の再分配と平等との関係で述べ、公的責任による最低生活保障の重要性を明らかにしていることです。
その5は、利用者の権利を実現するためには法律で一般的に利用者の権利を定め、そのうえにたって個々の契約で具体的な福祉サービスの権利を定める必要性を述べていることです。
その6は、福祉の職員は子どもから高齢者までの各種の社会保障立法を総合的に理解するとともに民法、消費者契約法、労働法などや児童虐待防止法、DV法などについての法的知識をもち、現在の政策の不十分な点を利用者の最善益の視点からを提言し、実践すべき役割があるとしていることです。
その7は、法の支配と社会保障立法との関係について、具体的な事例にもとづいて述べていることです。
そして、その8として、福祉の利用者も喜怒哀楽の感情を持った人間であり、そのような感性をもった人の意向を尊重した、利用者本位の福祉サービスを職員が実現にするには何をしたらよいかを明らかにしていることです。

目  次


第1 措置制度と人権 

−私が関与した生活保護訴訟を通じて−

1.生活保護と人権

(1)はじめに

(2)生活保護と福祉事務所の役割

(3)生活保護受給者と人権

2.社会保障立法カ活保護裁判

(1)社会保障立法と生活保護

(2)生存権と自由権

(3)福祉事務所の対応の誤り

(4)当局の対応に問題が残るとき

3.生活保護と人間らしい生活

(1)人間らしい生活とは

(2)生活保護家庭と預貯金の保有

(3)第2次藤木訴訟と裁判を受ける権利

(4)生活保護と権利擁護

4.介護保険と生活保護

(1)福祉事務所と措置

(2)福祉事務所の充実を

(3)国の経済政策と生活保護


第2 措置と契約時代の利用者の権利と職員の役割

1.措置から契約の転換について

(1)福祉行政の「要」としての措置

(2)契約への転換の意味

2.介護保険の「権利性」について

(1)法律上の権利と契約上の権利の異同

(2)契約制度と権利擁護との関連

(3)契約で介護の方法は変化したか

3.契約と措置の共存時代の職員の役割

(1)福祉職員の民法などの知識の必要性

(3)福祉と医療の連携

(4)苦情解決の重要性

(5)人権の擁護と権利擁護の異同

4.契約制度の今後の課題


第3 子ども、障害者、高齢者の事故

−利用者の生命、身体の安全とリスクマネジメント−

1.福祉とリスクマネジメント

(1)何が問題か

(2)事故問題と法律家

2.福祉施設における事故をどうみるか

(1)福祉施設の事故の原因と種類
(2)事故にどう対処するか

3.虐待問題と職員の任務

(1)複雑な虐待の要因

(2)児童の虐待防止と職員の任務

(3)高齢者の虐待と公的責任

4.事故の責任と職員の使命

(1)多様な責任について

(2)法人の責任と個人の責任の関係

(3)道義的責任は重いのか、軽いのか

(4)職員の使命について

5.施設における事故の防止のために

(1)事故と最低基準との関係

(2)個人?フ保護と権利意識の変化

(3)施設は安全との期待にどう答えるか


第4 高齢者の生活の安定と人権 

−自己責任と公的責任の間で−

1.人生80年時代の生活設計について

(1)人生80年時代と高齢期の生活

(2)老後の暮らしと財産

(3)老後の生活設計と貯蓄・退職金と生きがい

2.高齢期の住まいと介護等について

(1)高齢期の生存と住居

(2)在宅での介護と施設での介護

(3)有料老人ホームについbr>

(4)在宅での医療と病院

3.高齢期の生活の安定のために

(1)高齢者と消費者問題

(2)業者の相続対策の宣伝に注意

(3)離婚・再婚について

(4)財産管理と成年後見・生活支援員

(5)希望としての憲法と社会福祉


第5 利用者の人権とは何か

−人権の歴史からみた利用者の人権−

1.人権とは何か

(1)人権の歴史

(2)日本における人権の歴史<

(3)ロシア革命とファシズムの人権問題へ与えた影響

(4)東京裁判と日本国憲法の誕生


2.現代社会における人権の意義

(1)今日における人権保障の意味

(2)福祉の世界の人権状況

(3)社会福祉基礎構造改革と人権

3.利用者本位の福祉サービスとは

(1)利用者の人権について

(2)利用者本位の福祉サービスとは

(3)利用者の意向の尊重のために


U 人権からみた社会福祉の法

1.法と人権との関係

(1)法とは何か

(2)最高法規としての憲法

(3)国家と個人

(4)国家権力と刑罰

2.社会保障と法の支配との関係

(1)法の支配とは

(2)社会保障の現状と裁判の意義について

(3)社会福祉の法の研究の必要性

3.社会の変容と社会保障立法の関係

(1)生きた法としての社会福祉法

(2)企業にとっても大切な社会保障

p>

第7 憲法が変わると個人、家族の生活はどう変わるか

1.2つの憲法と国民の暮らし

2.明治憲法と生活をめぐる法制度

(1)家制度と社会福祉

(2)明治政府と土地の私有化問題

(3)天皇制と教育制度

3.戦後の憲法と生活をめぐる法制度

(1)戦前と戦後の法の連続と不連続

(2)戦後の土地法制と生活の変化

(3)人間らしい生活と労働

(4)障害者の自立と社会保障立法

4.生存権とッの生命・身体の安全の確保

(1)第2次世界大戦の日本にとっての意味

(2)原爆被爆者への国の扱い

(3)平和的生存権と社会保障の結びつき

(4)環境破壊(公害)と健康権

5.健全で安らかな生活と公的責任

(1)阪神大震災の高齢者・障害者へ与えた衝撃

(2)住み慣れた地域での生活

(3)安らかな生活と連帯の心

(高野弁護士の既刊本はここ社会福祉にあります。)

『乳幼児の事故と保育者の責任―公立と私立で保育者の責任がどう異なるか―

『子どもたちの事件と大人たちの責任―家庭・学校・地域の協力を求めて―』

『社会福祉と人権 ―高齢者・障害者の人権と国の責任―

『人間らしく生きる権利の保障 ―福祉、教育、労働等の事例から見た国・自治体の責任―

『介護保険法と老人ホーム―利用者の権利と行政・施設の職員の責任―』

『法科大学院で学ぶ人へ
現代福祉国家と企業社会における弁護士の役割
―何を大切にして弁護士は仕事をするのか』

既刊案内 社会学・社会福祉本の検索Top