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(日本で初めての手術をうけた長男) TOPへ
NEWS!!

 松尾隆先生が東京の町田市にある南多摩整形外科病院の病院長になりました。(02年4月1日より外来で診察をしています。)受診希望の方は病院に問い合わせて下さい。

TEL042-735-3731 FAX 042-735-3732

町田市小野路町11-1

松尾先生は火〜土曜日に外来に出ます。

医書出版のねらい(創風社 編集長 千田顕史)02/7/12更新!!(整形外科的手術と脳外科的手術の特色)

 

 医学書を出版するようになったのは、教育・保育書を出版する中で、障害児保育をすすめている人たちと、一緒に研究会を開くようになったからです。てんかん・自閉症・脳性麻痺の3つの障害で、障害児の70パーセント近くをしめます。これらの脳障害は、世界各国では医学者が研究をすすめていますが、そこで成果を確認された医療でさえも、日本の障害児医療の現場に届くには10年〜20年もかかり、障害児の家族や関係者は、実質的には医療の進歩を諦めているのが日本の現状です。患者側はどういう医療がいいかは医者まかせ、そして現場の医者は脳障害の世界の研究をそんなに学習していない。まして障害児医療は陽の当たらない分野です。この現状を打ち破り、障害児の医療を前進させるには、てんかん・自閉症、脳性麻痺について、世界の学会に行き、論文を発表して、外国の研究者と日常的に研究活動を交流している医学者に協力してもらい、患者側も学習できる本を出版し、日本の中に広めていくしか道はないと思いました。

 堀 智勝先生(東京女子医大脳外科教授)、松尾 隆先生(九州大学医学部臨床教授)のてんかん・脳性麻痺研究は世界の学会の中でも報告され、確認された内容です。自閉症の30パーセントはてんかんといわれてますので、自閉症=てんかんの角度から、自閉症についてもアプローチしていく計画です。

堀 智勝先生(東京女子医大脳神経外科教授)と
松尾隆先生(福岡県立粕屋新光園園長,九州大学医学部臨床教授)の医学研究(てんかんや脳性麻痺など)と常に連携しながら障害児保育をすすめている全国の保育園をお知らせします。これらの保育園は、障害児の医療と保育の連係について相談を引き受けていますので、直接、手紙や電話で問い合わせて下さい。
 なお、これらの保育園は同時に児童美術教育研究会のメンバーでもありますので、子どもの絵についての相談も引き受けています。


どろんこ保育園(沖縄県国頭郡本部町伊豆味2100―2 TEL/FAX 0980―47―6406)むぎの子共同保育園(沖縄県島尻郡大里村字古堅150―2 TEL 098―945―8192)梨の花保育園(島根県安来市荒島町393―3 TEL0854―28―6643) 風の子共同保育園(京都府舞鶴市大内野107 TEL/FAX 0773―76―4972) かもしか保育園(愛知県知多郡阿久比町宮津字井戸廻間11―3 TEL・FAX0569―48―6387)大きな木保育園(東京都世田谷区羽根木2―16―2 TEL 03―3328―9822) とねっこ保育園(茨城県取手市下高井1087―24 TEL 0297―78―2203 FAX 0297―78―9211) にしき保育園(埼玉県加須市川口1301―2 TEL/FAX0480―66―1656)  白鳥保育園(宮城県登米郡南方町峯90―2 TEL 0220―58―2681)

医学と保育の連携の中でわかったこと

 脳性麻痺――堀先生のグループの脳神経外科的手術は、筋肉が硬化しない、そして関節の変型もまだゆるやかな学童期前半までが適応です(脳性麻痺は神経が過剰に興奮しているため、その神経が支配する筋肉は年々硬化がすすみ、そのため関節の変型が進行していきます)。また痙性が強いと4才ぐらいでも関節が脱臼しているケースもあり、この場合も手術の効果は期待できません。また上半身全体の痙性に対しても適応ができません。しかし、上半身でも、腕から先への神経縮小術は可能です。整形外科的手術よりも適応はせまいですが、何よりもすぐれているのは、手術による身体への影響が小さいことです。神経縮小術では1〜2日で歩行練習が可能です。DRETZやRHIZOTOMY

(参考:The Hyman-Newman Institute for Neurology and Neurosurgery
Beth Israel Medical Center, Singer Division New York, NY のHP http://nyneurosurgery.org./cfr/child/spasticity/rhizotomy/introduction.html

術前術後の映像がダウンロードできます)

でも3〜4日後にはリハビリを開始します。そしてわずかな尖足という部分の手術でも身体全体の固さがとれ、また顔の緊張もゆるんで声が大きくなったり、抱くと術前のような棒のような固さがやわらかく変わっていたりするのには驚きます。松尾先生のグループの整形外科的手術はどんな痙性に対しても(上半身も下半身も)、またすでに脱きゅうまで進行している人に対しても手術の方法をもっています。でも手術の効果が最もあるのは関節が脱きゅうする前に手術を受けることです。この整形外科的手術は高度なテクニックと高度な理論をもっていますので、脳性麻痺の整形外科医の誰もが手術できるものではありません。松尾先生のグループで一緒に手術を重ねてきた整形外科医は全国にいますので、患者サイドはそれらのドクターをさがし、手術の内容に深くふみこんだ相談をしながら手術を受けています。小児科や小児神経科は痙性の手術に関しては専門外です。

我々としてわかったことは脳性麻痺の根源である痙性を脳神経外科的アプローチまたは整形外科的アプローチでとる、そして痙性をとったあと痙性のために成長が不十分だった筋肉を育て、身体の動きをよくするリハビリ(訓練)をやっていきます。リハビリ(訓練)で痙性はとれないのです。手術で痙性をとって、リハビリで筋肉を育てるのが正しい方法です。その後の成長にとって重要ということです。痙性はその強さによって違いはありますが、強い子どもは4才ぐらいから関節の脱きゅうをひきおこします。この痙性によって10〜20才の間に大部分の人は筋肉が硬化し、脱きゅうや痛みにつながるケースも多いようです。訓練で痙性を永続的にとれたという医学研究は日本でもアメリカでも出ていません。早期発見、早期訓練で脳性麻痺を直したという医学論文はないのです。大津方式のような早期発見早期訓練にこだわり続け、筋肉の硬化が進行し、関節の変型がすすんで手術のタイミングを失ってしまっているのが日本の脳性麻痺療育の現状です。

整形外科的手術と脳外科的手術の特色――脳性マヒの整形外科的手術は全国で行われていますが、手術の結果、機能が下がる手術もあり(受けない方がよかった)、その差はとても大きいようです。脳外科の堀教授は整形外科の松尾先生の手術を10時間ほど立ち会ったことがあります(松尾先生が昭和大学医学部で脳性マヒの手術をした)。堀教授の感想として、「松尾先生の手術の能力にまで、多くの整形外科医が達するのはかなりの努力が必要ではないか。脳性マヒの脳外科的手術は顕微鏡手術なので、一定の訓練をすれば多くの脳外科医がマスターするのは可能と思う。」というものでした。脳性マヒとわかったら、整形外科的診察は継続的に受ける必要がありますが、内容的にはかなり差があることを患者サイドとしては、よく考えなければならないようです。このことは松尾先生のホームページをみるとよくわかります。

てんかん――薬を飲んでもてんかん発作がとまらないケースでは、高度なてんかん専門医の診断を必要とします。(てんかん学会ではてんかん専門医の認定試験を行い、第一回で全国244人の認定医が誕生しました。)そこで薬をかえて発作がとまる場合と、どういう薬でも発作がとまらない本来の難治性てんかんの場合のどちらかがわかります。本来の難治性てんかんについては、創風社刊の『難治性てんかんの治療』に出てくるさまざまな検査と手術法があり、てんかん外科によって発作をゼロまたは大幅に減少させることが可能です。難治性てんかんといってあきらめる必要はないといえます。

 脳性麻痺の子ども、てんかんの子どもの障害児保育はこのような医学研究とむすびつくことによって大きく変わってきました。脳性麻痺、てんかん、自閉症などの障害そのものは医学研究による医療が必要であり、教育心理学や養護訓練などがその役割を代わることはありえないと思います。そこを混同して医療を否定する障害児の関係者が多いのが、今の日本の現実です。くわしくは、創風社のホームページよりリンクできる松尾先生、堀先生のホームページを見た上で、実際に医療をうけた子どもを育てている保育園に連絡してみて下さい。

 障害児に必要な医療を発展させるには患者サイドが医学を学習していくことが不可欠です。創風社はそのための本をだしていきたいと努力しているところです。

自閉症――自閉症も軽度から重度までさまざまなタイプの例があり、コミュニケーションできる軽度な自閉症を「高機能自閉症」と分類したりしています。しかし、世界の医学研究は脳のどの部分のどのような障害かまだ究明できていません。子どもの外面的な状態から自閉症と判断している段階で、医学的治療はない段階です。しかし、数年前のアメリカの脳神経外科研究として1つの注目すべき報告がありました。アメリカの自閉症児のかなりの数の脳をMEGという脳機能を調べる機器で検査したところ、30%の自閉症児の脳溝からてんかん波をキャッチしたという研究です。

今、日本で使われている頭皮脳波を測定するEEG(脳波計)は脳回(脳の平らな部分)に6cm2のてんかん病巣がある場合だけ反応するもので、脳溝にある病巣はキャッチできません。MEGがどのような検査をするかは創風社刊の『難治性てんかんの治療』にくわしく出ています。しかし、MEGを脳研究に活用している東大、東北大、京大などではまだまだ自閉症研究にMEGを使うところまではいってません。自閉症の一部がてんかんとわかれば、薬もありますし、てんかん外科もあります。30%の自閉症の子どもたちに、医療の道ができれば、次の残りの原因不明の研究にすすめるのではないでしょうか。