光武 幸、小内 純子、湯川 郁子(札幌学院大学)

 釧路内陸部の地域形成と
観光マーケティング

A5判上製 240頁 本体 2400円

発売中

 

 本書は、釧路内陸部を対象に、地域形成と観光・マーケッティングについて論じている。釧路内陸部は実に可能性を秘めた地域である。自然、温泉、景観と、その豊かさを否定する者はいない。I部では、観光・マーケッティングの考え方を利用して、釧路内陸部の観光資源としての価値を明らかにし、それを生かした地域再生の方法を提案している。具体的には、釧路湿原と温泉の街・弟子屈町を取り上げ、環境保全に留意しつつ観光資源を生かす道を探る。
 II部では、標茶町の2つの地区(阿歴内と虹別)を対象に、入植から現在までの地域形成過程を追い上げる。2つの地区では、現在共通の政策のもとで地域づくりが実践されている。しかし、その活動状況は大きく異なる。その違いを生み出した要因は何か。この課題にソーシャル・キャピタル論の視点からアプローチしたものである。
 グローバル化の進展のなかで地域は「個性」を求められている。「個性」ある地域づくりの方途は、抽象的は議論ではなく、個別具体的な事例から探っていくことでしか明らかにし得ない。こうした信念に基づき、本書では特定の地域の歩みを丹念に解きほぐすことにこだわった。

目  次

序 章

I部 釧路内陸部の観光・マーケティング

第1章 観光資源・釧路湿原のマーケティング
 第1節 観光地のマーケティング
  1. マーケティングの必要性
  2. 観光地マーケティングとは
  3. 観光地マーケティングの対象地域
 第2節 釧路湿原今昔
  1. 釧路湿原の地理的概要
  2. 湿原開発の歴史の中にある湿原の保護
  3. 国立公園釧路湿原
 第3節  観光資源としての釧路湿原の特徴
  1. デスティネーション・ブランド・ベネフィット・ピラミッド
  2. 釧路地域の観光資源および特徴――レベル1
  3. 観光資源の特徴から生じるベネフィット――レベル2
  4. 釧路地域を訪れることによって旅行者が得られる心理的・
     情緒的ベネフィット――レベル3
  5. 観光地釧路湿原の差別化ポイント
 第4節 釧路湿原観光地マーケティングの基本的考え
  1. ライフスタイルの変化と釧路湿原の価値
  2. マーケティング活動を考えるにあたって
第2章 摩周温泉郷の創造―弟子屈の温泉もコラボレーション―
 第1節 なぜ温泉郷なのか
  1. 温泉郷として考慮する地域とは
  2. 温泉郷創造の意味するところ
 第2節 弟子屈町の温泉発展過程
  1. 歴史的視点で観光を考える意義
  2. 弟子屈地域の温泉が記述に登場
  3. 弟子屈地域の温泉の夜明け
  4. 発展過程における弟子屈温泉地の評価
 第3節 弟子屈町の温泉地の現状
  1. 温泉地の特徴
  2. 観光入込客数の推移は何を示すのか
 第4節 摩周温泉郷創造
  1. 弟子屈町の観光マーケティングを考える基本
  2. 摩周温泉郷の構築にむけて

II部 釧路内陸部の地域形成と住民活動

第3章 阿歴内原野の開拓と地域形成
 第1節 課題と方法
  1.課題と方法
  2.考察の前提――明治末年の標茶地方――
 第2節 入殖の始まりと「混同農法」
  1.阿歴内原野への入殖
  2.『釧路新聞』にみる内陸部拓殖方針と「混同農法」
  3.増地請願運動
 第3節 増地処分と「小農的馬産」の展開
  1.増地処分と馬匹購入
  2.「小農的馬産」の展開と地域形成
  3.阿歴内産業組合の結成
 第4節 まとめと展望
第4章 大規模酪農地帯・標茶町虹別における地域づくり運動の展開とその要因
      〜北海道地域社会にみる外発的開発から内発的発展への転回軸〜
 第1節 問題意識と分析視角
  1.問題意識
  2. 分析視角
  3.道東の大規模酪農地域に関する研究成果の検討
 第2節 戦前期の外発的開発と地域社会の形成
  1.許可移民と大凶作
  2.根釧原野農業開発5カ年計画と主畜農業への転換
  3.集落形成と酪農振興会の結成
 第3節 戦後の国策の推進と地域社会の変化
  1.戦後の開拓事業と虹別
  2.農業近代化政策スタート直前の虹別
  3.農業近代化政策の実施と農民層分解の進展
  4.中間的考察
 第4節 集落再編と「虹別農村公園化計画」の推進
  1.集落整備事業と集落再編
  2.「虹別農村公園化計画」の策定と実行
  3.虹別農業における多様化の動き
 第5節 内発的な地域づくりを生み出した要因
  1.虹別を範域とする組織の存在
  2.酪農継続農家の経済的基盤の確立
  3.後継者層の学習とネットワーク
  4.虹輪塾の結成と地域づくりの活動
  5.虹別連合振興会の結成と虹輪塾の活動との融合
  6.地域振興策による行政のサポート
 第6節 おわりに
第5章 標茶町阿歴内における地域形成と集落再編過程 
    ――地域づくりを規定する要因とは――
 第1節 本章の課題
 第2節 戦前期の地域形成と馬産
  1.阿歴内への入植
  2.馬産地としての阿歴内
  3.酪農の導入
  4.有限責任阿歴内信用購買販売組合の設立と展開
  5.世帯数の増大と集落の形成
 第3節 戦後入植と阿歴内農業
  1.戦後入植と集落の増加
  2.馬産地阿歴内の推移
  3.酪農の動向
  4.阿歴内と大根生産
  5.兼業農家率の高さ
  6.阿歴内農業の現状
  7.農業生産と地域社会
 第4節 集落整備事業の実施と活動の諸相
  1.集落整備事業前の集落の実態
  2.集落整備事業の実施
  3.定期総会資料にみる阿歴内地域振興会の諸相
 第5節 阿歴内地域整備計画の策定と「阿歴内交流広場構想」
  1.阿歴内地域整備計画の策定過程
  2.「阿歴内交流広場構想」の実現へ向けて
 第6節 地域づくりを規定する要因

 資料1 虹別農村公園化計画
 資料2 阿歴内地区整備計画

  あとがき

執 筆 分 担

  光武 幸 (商学部) 序章、第1章、第2章

  湯川 郁子(経済学部) 第3章
 
  小内 純子(社会情報学部) 第4章、第5章

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